血圧とは、心臓から血液が全身に向けて送り出される際に（動脈の）血管壁に加わる圧力のことです。この血圧が、慢性的に基準とされる数値を超えていると判定されると高血圧と診断されます。具体的な数値に関してですが、日本高血圧学会のガイドラインでは、収縮期血圧（最高血圧）が140 mmHg以上、もしくは拡張期血圧（最低血圧）が90 mmHg以上の場合としています。
発症の原因は2つあるとしています。ひとつは、日本人の全高血圧患者様の8～9割を占めるとされる本態性高血圧です。これは高血圧を引き起こすとされる基礎疾患がなく、原因を特定することができないとされるものですが、元々高血圧になりやすい体質の方、不摂生な生活習慣（塩分の過剰摂取、過食、運動不足、喫煙、多量の飲酒、ストレス 等）の積み重ねによって引き起こされると考えられています。もうひとつは二次性高血圧と呼ばれるもので、こちらは原因がはっきり特定できる高血圧です。具体的には、別の病気がきっかけで発症するケースや薬剤の影響などが挙げられます。病気としては、腎実質性高血圧、腎血管性高血圧、原発性アルドステロン症、クッシング症候群、褐色細胞腫などの疾患が引き金となります。薬剤としては、NSAIDs、漢方薬の甘草、グルココルチコイドなどを使用することで高血圧を誘発することがあります。
なお自覚症状が出ないからと放置を続けると、常に血管はダメージを受け続けることになります。これが動脈硬化を促し、次第に血管は肥厚化し、内部は脆弱化していきます。その後、血管内で血流の悪化や詰まりがみられるようになると、脳血管障害（脳梗塞、脳出血 等）、心臓病（狭心症、心筋梗塞、心肥大 等）、腎臓病（腎不全、腎硬化症）、眼病変（眼底出血）など重篤な合併症を発症するリスクが高くなります。
治療について
血圧を常にコントロールし、合併症を引き起こさないようにします。そのためには、これまでの生活習慣を見直す必要があります。まず食事療法と運動療法から行っていきます。
食事療法で最も大事なのが、塩分摂取量を減らすことです。1日の塩分摂取量を6g未満にすることです。ちなみに日本人の平均的な1日の塩分摂取量は10gなので、容易ではありませんが味付け（酸味、香辛料 等）を工夫するなどしていきます。また腎臓の機能が正常な方はカリウムを多く含む野菜を摂取し、体内から塩分を排出させやすくします。また肥満は心臓に負荷をかけるので、心当たりがあれば減量してください。具体的には、BMI 25.0未満（体重kg ÷ （身長m）の２乗）になることを目標とします。このほか、お酒を飲む方は節酒、喫煙される方は禁煙を実践してください。
また体を動かすことは血圧を下げる効果が期待できるので日々の生活に取り入れます。ただ激しい運動は、逆に血圧を上昇させます。このため、体に十分酸素を取り込んで全身を使う運動である有酸素運動（ジョギング、サイクリング、水泳 等）が効果的とされています。運動強度に関しては、息がやや上がる程度の強さで、1日30分以上は行うようにします。理想的には上記をできるだけ毎日実践するのが望ましいですが、日常生活の中で1日に歩く歩数を少しでも増やすなど、可能な範囲で継続的に取り組むことが何より大切なのです。
なお上記だけでは、血圧のコントロールが困難な場合や初診時の血圧が極めて高い場合は、併行して薬物療法も行われます。降圧薬が用いられるわけですが、患者様の血圧の状態によって、何種類か組み合わせて投与されることもあります。薬の種類としては、ARB、ACE阻害薬、カルシウム拮抗薬、β遮断薬、利尿薬などが挙げられます。